絶対に知っておいたほうが良い飲食を守るPL保険とは?

経営ノウハウ

飲食店を運営していくうえで必要な保険を知っていますか? 飲食店の経営で避けたい事態ですぐに思い浮かぶのは、食中毒や異物混入ではないでしょうか。実際にリスクを事前に対策するにはどうしたらよいのだろう、と考えている方にぜひお読みください。

今回この記事では、飲食店にとっては無くてはならいないPL保険について説明していきます。PL保険と聞いても、すぐにピンと来る方は少ないかと思います。しかし、PL保険を味方につけ、リスクへの事前対策をし、お客様とお店の両方を守っていきましょう。

PL保険とは?

PL保険の正式名称は、「製造物賠償責任保険」といいます。

この保険は、生産物や生産販売者が行った仕事において生じた欠陥がお客様に損害を与えた際に、賠償責任を代行してくれる保険です。

そしてPL保険は、「PL法」に基づいて設けられている保険です。

PL法の正式名称は、「製造物責任法」といい、製造・販売した商品・サービスの欠陥によって、誰かの身体や財産、生命に侵害を与えてしまった場合に、製造業者等が損害賠償責任を負うべきと定めた法律です。

PL法が製造物・生産物に関わってくる重要な法律ということが分かります。ですので、製品やサービスの販売を行っている店舗や、ものを生産・製造している団体や企業、まさに、飲食店を経営されている方には、PL保険への加入をお勧めします。

PL保険と飲食店の関係

ここまでPL保険というものが一体何なのかつかめてきたと思います。

ですが、中には、PL法に基づいて作られているため、PL保険への加入が義務化されているのではないか、加入をしないと罰則を受けるのではないか、と気になっている方もいるのではないでしょうか。

現在、PL保険の加入をしなければいけない。という法的な義務は課せられていません。

しかし、PL保険への加入をお勧めする理由があります。

たとえ、どんなに小さく安価な商品や、安全性が確認されている商品であっても、お客様に損害を与える可能性が100%ないという保証はないのです。

この事実からも、商品を生産し販売している飲食店にとって、いかにPL保険への加入が欠かせないものかが分かります。
お客様とお店の両方を守るため、PL保険への加入を推奨します

食中毒

ここからは度々出てくる、食中毒について深堀していきます。

やはり食中毒は飲食店を経営していくうえで致命的になるリスクです。

食中毒とは、人体に影響を与える寄生虫が付着した飲食物を、偶然または過失で混入した食材を口にし、体内に有害な微生物や物質を取り込んでしまうことにより発症します。

よく耳にするノロウイルスも食中毒のひとつです。

ノロウイルスは牡蠣などの二枚貝に潜んでいます。また、ノロウイルスにかかっていても無症状の感染者から食材を介して感染することも多いです。また、このウイルスは冬に多く発生し、感染力が非常に強いため集団完成を引き起こしやすい食中毒原因物質です。

また、聞きなれないカンピロバクター・ウェルシュ菌もあります。

カンピロバクター菌は、少量で発症し鶏卵・鶏肉に多いです。

さらに、ウエルシュ菌は別名「給食菌」とも呼ばれており、作り置きのカレーや煮込み料理等が原因になることもあります。そして、100度1時間の加熱にも耐える芽胞をつくり、通常の過熱では死滅しない菌です。

実際食中毒はどのくらい起きているのか

ここまでで食中毒がどのようなものか分かってきました。そうすると、

じゃあ実際どのくらい食中毒が発生しているの?と気になる方もいると思います。

厚生労働省の調べを元に、

令和元年から令和4年(2019-2022年)の4年間の発生数をご紹介します。

令和元年(2019年)の発生数は1,061件、患者数13,018名、死者4名

令和2年(2020年)の発生数は887件、患者数14,613名、死者3名

令和3年(2021年)の発生数は717件、患者数11,080名、死者2名

令和4年(2022年 4月現在)の発生数は86件、1,112名、死者0名

(参考サイト)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/04.html

毎年必ず飲食店で食中毒の事故が発生しています。

そして、件数と患者数の数値の関係から、食中毒事故は一度の発生からたくさんの方が被害に遭うことがわかります。そうなると賠償金も高額になってしまいます。

お店で食中毒が起きた時になにをするのか

もしも、お店で食事をしたお客様から、「食中毒かもしれない」と連絡を受けたら、どう対応すればよいのでしょうか。

①事実確認の把握をしましょう

一番最初に考えられることは、食事をされたお客様本人、またはお客様のご家族からの体調不良の連絡だと考えられます。問いだしたり、否定しないように注意しましょう。

お客様から、

・いつから、どのような症状なのか

・来店日時と人数

・食べたメニュー

・複数で来店していた場合、他に症状が出てる人はいないか

・病院/保健所に行ったか

・お客様のお名前と連絡先

上記の内容を聞き、正確に事実確認をとる事が大切です。

必ずメモにとりましょう。

②病院に行くように促しましょう

原因が何なのか、自分のお店の料理ではなく他のお店で食べた料理で症状が出ている可能性もあります。本当に食中毒なのか、それとも消化不良なのかということも含め、病院の判断を仰ぐ必要があります。

③診断待ちの間に情報収集をしましょう

お客様が病院を受診してから、診断結果が出るまで2〜3日ほどかかります。

その間に、

・同じ日に同じメニューを食べたお客様から、体調不良等の連絡の有無

・仕入れ先の卸売御者に同様の連絡の有無

・従業員に体調不良のメンバーの有無

もしも食中毒の原因として疑わしい食材がある場合は、保健所の検査に提出するために保存しておくことをお勧めします。

検査の結果、

食中毒」だった場合

食中毒だと診断された場合、その原因が自分のお店なのか、それ以外なのかを特定する必要があります。万が一、自分のお店側に過失があった場合、営業を休止し、保健所が行う立ち入り調査に応じる必要があります。そのため忘れてはいけないことが、厨房内は清掃・掃除をせず、そのままの状態で保存しておくことです。

調査の際に必要となる資料は、

・食材の仕入元の詳細を記載したリスト、仕入れ年月日

・調理や加工方法が分かるレシピまたはメニュー

・店内の各チェック表(清掃チェック表等)

・食品衛生の管理マニュアル

・発症時点から7日程度遡り利用者が食べていたメニュー

・調理済み食品の保管方法や時間と、販売又は提供方法等

このほかにも保健所の必要に応じて、水質検査の結果、貯水槽の清掃記録等や、家族・従業員の健康状況の報告や検査結果等も求められることがあります。

「保健所の調査を受けていること」「結果が出次第早急に報告する」などお客様の不安な気持ちを軽減できるよう伝えていきましょう。

保健所の指導や処分とは別に、「賠償責任」が発生することが考えられます。

保健所の立ち入り調査が終わり、「お店側の過失によって食中毒が発生した」が最終結果となった場合、数日から一か月以内に行政指導や行政処分の判断が下されます。

そこから、お客様の症状の程度や通院日数・欠勤によっては、追加通院費、慰謝料、休業損害等の支払いが発生することも考えられます。

PL保険が実際に適用された事例

実際にPL保険が適用された事例について、見ていきましょう。そして、決して食中毒事故が遠い誰かの話ではなく、実際に自分にも起こりうる身近な問題だと受け止めていくことが大切です。

事例1 異物混入の場合

1999年6月30日に日本で初めてPL法(製造物責任法)が適用された判決です。ジュースの中に異物が混入しており、そのジュースを飲んだことによる咽頭部負傷事故でした。

ファストフード店で購入したオレンジジュースを飲んだAさんが、飲んだ後に吐血しました。その後、診察所で診察を受け、さらに国立病院に搬送されました。

そして、Aさんは、ジュースの製造メーカーに対し、製造物責任、債務不履行、不法行為に基づいて、負傷によって起きた精神的苦痛から慰謝料30万円および弁護士費用10万円の各損害賠償を求め提訴しました。

メーカー側は、「Aさんが多量の出血を伴う損害を負った事実はない、直径7ミリメートルのストローを通過するような異物は故意でない限り混入することはあり得ない」として争いました。

判決は。ジュースの製造過程、販売、飲食の通過を詳細に設定したうえで、「ジュースに異物が混入する可能性は否定できない」という理由から、「ジュースが通常有すべき安全性を欠いていたということであるから、ジュースには製造物責任法上の『欠陥』があると認められる」という判断をしました。結果として、メーカー側は慰謝料5万円、弁護士費用5万円の計10万円の支払いが命じられました。

(参考文献)http://www.sih.jp/news/kenkou/no23.htm

事例2 食中毒事故の場合(イシガキダイ)

2005年1月26日に料亭で料理されたイシガキダイに含まれていたシガテラ毒素が原因で食中毒にかかり、下痢や嘔吐の症状が生じた複数のお客様から、料亭経営者に対し、製造物責任に基づき損害賠償を求めた事案です。この件で大事とされたポイントは、イシガキダイが「製造物」に当たるとされるような「加工」がされていたかどうかでした。判決では、食材を調理することは製造物責任法においての加工に該当し、提供された料理は加工された製造物に当たるとされました。つまり、料理に食中毒の原因があったことが製造物の欠陥にあてはまるとし、最終的に製造物責任が認められました。

この件で、料亭は損害賠償を総額でおよそ3,800万円、ぞして実際に支払われた賠償金の額はおよそ1,200万円でした。

(参考文献)https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/other/product_liability_act/assets/comsumer_safety_cms206_211224_01.pdf

事例3 食中毒事故の場合2(和牛ユッケ)

2011年の4月に焼肉チェーン店「焼肉酒家えびす」にて、和牛ユッケを食べた181人のお客様が食中毒にかかり、5人が死亡した事件です。富山県の複数の遺族9名が、お店の運営会社「フーズ・フォーラス」と当時の社長らに約2億円の損害賠償を求めた案件です。調査の結果、食品を取り扱う段階において安全が確保されず、ユッケの提供が安易に行われていたことが事件発生の大きな要因であったと考えられました。 そして判決は、社長らへの賠償責任は認めず、運営会社にのみ約1億7千円の支払いを命じました。

(参考文献)

https://www.asahi.com/articles/ASL3F427DL3FUTIL00W.html

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000025ttw-att/2r98520000025tz2.pdf

保険を選ぶときの注意点

ひとえにPL保険に加入しましょうと言っても、会社によって内容が異なります。

最後に、PL保険を選ぶときの注意点について考えていきましょう。

保険適用外の確認

これまで紹介してきたPL保険、もちろん、飲食店の経営をするうえで運営中に想定されるリスクに備えられる保険の加入は大切です。しかし、保険に入っていればどんなトラブルが起きても補償されるというわけではありません。

実際に、どのようなケースが補償の対象外になるのか具体的な例をいくつか見ていきましょう。

保険対象外の例

①故意や重大な過失による事故は対象外

例えば、「お店側がわざと傷んだ食材を使った料理を提供し、食中毒が発生した」といった場合は、補償を受けられない可能性が高いです。また、「法に反した不当表示・虚偽表示によって、お客様に損害が起きた」といったような法令違反がある場合も補償の対象外となります。

②免責金額や支払限度額が設定されている

契約内容によって免責金額や支払限度額が設定されていて、自己負担になることもあります。

例えば、1つの事故に対する免責金額が20万円の場合、対象となる損害のうち20万円までは飲食店が自ら負担しなければいけません。また、支払限度額が3000万円の場合は、損害額が3000万円を超えた額は自分で負担することになります。

保険の見直しをお勧めするタイミング

飲食店を運営していくうえで、考えられるリスクは一定ではありません。

自分と、自分のお店に適した保険を見つけることで、より良い補償が受けられるように見直していきましょう。

保険を見直すおすすめのタイミングとしては、

・保険料が高いなと思ったとき

・新しく店舗を増やすとき

・店舗の改装をするとき

・年度が替わるとき

・保険の更新時期

・従業員を増やすとき

感染症のパンデミックや、地震や集中豪雨などの自然災害が起きた際に見直す方も増えています。想定外のハプニングから営業休止し、再開まで長い期間がかかる事も考えられます。

こうしたリスクにも備えられるよう、こまめに保険を見直すことが大切です。

まとめ

PL保険は、異物混入や食中毒などで賠償責任が課せられた場合、その賠償金を補償してくれる保険です。オプションを追加することによって、見舞金費用・事故調査費用・起訴時の弁護士費用を補償の対象とすることも出来ます。

特に保険に入っていない中小企業の場合、資本金がない場合が多いので、倒産する可能性も大幅に上がります。やはり、飲食や食品加工のビジネスをしているうえで、食中毒のリスクを100%防ぐことは不可能と考えられます。

ただ飲食店にとってPL保険という心強い味方を付けることによって、安心して飲食店経営していくことが出来ます。テンポスでは飲食店専用の保険のご案内もしております。

PL保険を相棒に、大切なお店と、大切なお客様を守っていきましょう。

飲食店専用保険

▼食中毒以外の店舗総合保険についての詳細記事はこちら

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