式譲渡

社や企業を存続させる
ひとつの方法

株式譲渡とは、譲渡対象企業(売り手)の
株主が保有株式を譲受先(買い手)に売却し、
経営権を引き継ぐ取引手法です。
中小企業はもちろん、個人間でも取引が
行われているポピュラーな譲渡方法です。

株式譲渡

株式譲渡と事業譲渡の違い

株式譲渡は、株式を売却するという目的の譲渡を指します。
事業を譲渡するのとは違い、対象となる企業の株主が変わるだけで、従業員の雇用や顧客との取引関係も存続します。

事業譲渡は、譲渡企業内の一部の事業もしくはすべてを第三者の企業に譲渡をするという方法です。また、何を譲渡するのか(不動産や商品など)が決まっている場合を指します。譲渡後も譲渡企業の経営権が移動するということではないため、そのまま経営権を保持し、譲渡企業の法人格を残すことができます。

■株式譲渡

株式譲渡

■事業譲渡

事業譲渡
株式譲渡 事業譲渡
譲渡する対象 株式 事業のすべて
または一部
対価の受け手 譲渡対象企業の株主 譲渡対象企業
譲渡対象企業の経営権の存続 しない する
主な税金 【売り手】
所得税(復興税)、住民税

【買い手】
なし
【売り手】
法人税等、消費税

【買い手】
消費税、
不動産所得税、
登録免許税

株式譲渡のメリット・デメリット

メリット

① 売却益への税金が安く抑えられる

株主が個人の場合、譲渡所得への税率は20%と、事業譲渡と比べて税金が安く抑えられます。
事業譲渡の場合は、約50%ほどとなり、半分ほど節税できます。

② 事業を存続できる

株主が変わるのみであるため、従業員の雇用や顧客との取引関係はそのまま維持することができます。売り手企業の経営者が株主でなくなるだけであれば、経営方針を大きく変えることなく事業が継続できます。

③ 株式の譲渡対価を受け取れる

売り手の株主は、株式譲渡の対価を受け取ることが出来ます。
非上場企業の場合、株主は保有株式を売却したくても買い手を見つけることが困難ですが、株式譲渡では契約後に金銭を対価として受け取ることが出来ます。
オーナー社長が自社株を売って手にした金銭は、退職金代わりに使用することもできます。

④ 手続きが簡単

株式譲渡は売却会社の財産や契約関係を全て買収企業に引き継ぐことができます。
事業譲渡は譲渡の対象が特定の事業のため、会社の全ての財産や契約を引き継ぐことはできません。
たとえ事業の全部譲渡であっても、発行している株式 支配権 は売り手の側に残ります。

従業員との雇用契約や取引先との業務委託契約、行政の許認可など、買収企業で新たに契約し直す必要があったり、承認を経ていかなければなりません。一方株式譲渡は、そういった手続き自体が無く、会社全体が所有する資産・契約・許認可を全てそのままの状態で引き継ぐことができるため、大幅に手続きを簡略化できます。そのため、交渉を始めてから1 ヶ月程度でクロージングまで完了する場合もあります。

株式譲渡であれば、経営上の都合で、いきなり経営者が交代するのは混乱が生じるので、しばらく元の経営者に居て欲しいという交渉はありますが、株式譲渡の契約自体はすぐ履行することができます。

デメリット

① 50%以上の株式を売却した場合は
支配権を失う

株式譲渡は会社全体が取引対象のため、株式を全体の50% 以上手放せば単独で取締役の選任などの重要な議決ができなくなり、売却会社の実質の支配権を失います。
事業譲渡では特定の事業だけ切り出して売却することができるため、会社名を含む法人格は売却側の手元に残すことができますが、株式譲渡で100% の株式を売却した場合には自分の手元に法人を残すことはできません。

② 負債が大きく買い手がつきにくい

株式譲渡は負債も財産の一部として引き継いでもらうことができます。その負債が大きすぎる場合は買い手がつきにくくなります。負債が大きい場合は、事業譲渡に切り替えて買い手がつきやすい状態にし、現金化しやすい事情のみ売却するという手段に切り替えるケースがあります。

③ 不採算事業があると譲渡価額が
減ることも

不採算事業があることで、マイナス評価となり譲渡価額が減ることもあります。
少しでも高い価額で株式譲渡するためには、不採算事業を会社分割で切り離したり、採算が取れない分野から撤退したりするという方法でマイナス評価をプラスに変えることができます。

手続きの流れ

step1
株式譲渡契約書の締結

売り手と買い手の間で契約を締結します。
通常、契約書の締結に際して、当事者の取締役会決議が必要になります。

step2
譲渡承認の請求

対象会社が、譲渡制限株式発行会社である場合、売り手が対象会社の取締役会に譲渡承認の請求を行います。

step3
譲渡承認の
取締役会決議

対象会社が譲渡制限株式発行会社である場合、 対象会社において株式譲渡のため取締役会の承認決議を行う。

step4
公正取引委員会への
届出

独占禁止法における企業結合規制に基づく届け出を事前に提出します。
提出要件に該当する場合には、 少なくとも30 日間の待機期間を経なければクロージングを迎えられません。

step5
株式譲渡契約書の締結

株式譲渡代金の決済を行います。
株券発行会社の場合には、 売り手から買い手に対して株券の交付が行われます。

step6
株主名簿書き換え

クロージング後に買い手は対象会社に対して、 株主名簿の書き換えを請求を行います。