飲食店の設備投資と定期借家契約の関係性とは?注意点についても解説!【教えてふ~みん!】

経営ノウハウ

みなさまこんにちは!ブログ執筆者の自称ふーみんです。

今回は、前回のコラムに引き続き、最近よく目に付く【定期借家契約】に関係するコラムとなります。前回コラムでは、そもそも定期借家契約とは何ぞや?の内容にて解説しましたが、今回は意外と多くの飲食店のみなさまが見落としがちとなる、定期借家契約と設備投資との関係性について解説します。以下、内容の解説となります。

前回のコラムはこちら:「店舗賃貸借契約書は実は2種類!? 飲食店が結ぶ賃貸借契約それぞれの解説、注意点」

飲食店の設備投資について

この段では、飲食店の設備投資および【投資】をしたならば切っても切り離せない【減価償却】について、考え方の解説となります。
なお、減価償却については、どちらかと言えば税務会計面での要素が強い内容なので、本コラムに記載内容は、あくまで考え方の解説となります。

記載の数値が実は細かく見ると間違っているかもしれません。詳しくは必ずお近くの税理士先生にご相談・確認ください。

ただし税理士先生に相談するにしても、減価償却の「げの字」も知らない方に相談に来られても、そこから税理士先生が説明するのは、税理士先生も疲れちゃいます。

少なくても税理士先生と普通に会話ができるレベルまで予備知識として押さえておきましょう。

設備投資とは

ここで言う設備投資とは、いわゆる飲食店のみなさまが開業するに必ず行う内装関連の工事のことです。
厨房機器を入れたり、机椅子を用意したりetc細かいのまで入れればけっこう膨大な内容かなと思われます。なお、一般的に建物に入居するテナントが行う工事については、それが商業施設内でも、普通のビル内であったとしても、大きく3区分(A工事・B工事・C工事)に分かれます。

また、ビルオーナー側から工事区分表という資料が賃貸借契約と同時に渡されるのが一般的であり、この工事区分にもとづいて入居テナントは内装工事を行います。以下、それぞれの工事区分の内容です。

●A工事:その建物の構造上根幹に関わる工事です。例えば柱の工事、基礎の工事、建物の共用部にある設備の工事(エレベーター等)が挙げられます。
 ⇒A工事であるならば、大家の責任と負担において行われる工事のため、テナントに金銭負担等は発生しません。

●B工事:直接建物の根本に影響は及ぼさないが、テナントの都合で発生する工事の内、好き勝手テナントにいじくられると大家としては困る工事内容です。代表的なのは電気の分電盤の工事、空調関連の大元の工事、床下の配管工事等が挙げられます。
 ⇒あくまで「テナント都合」の工事のため、責任と負担はテナントに発生します。ただし、大家としてはテナントに勝手に行われると困る工事のため、大家都合で工事指定業者が選定されます。一般論として、大家の指定業者による工事のため、工事金額は高くつく傾向です。

●C工事:上記AB工事に該当せず、テナント都合にてテナントが自由に行える工事です。いわゆる一般的な内装工事が該当します。
上記ABC工事のうち、特にB工事がくせ者です。これが意外と高くつきます。極端な話、もともと事務所だった場所を飲食店として使うとなった場合、根本的なインフラ工事を行う必要があり、これの大半がB工事にあたります。

よって飲食店のみなさまには、特にスケルトンから内装工事を始めるにあたり、従前のテナントが何だったのかは、よくよくご確認ください!!!

設備の資産計上とは

上記でB工事にしろ、C工事にしろ、飲食店のみなさまが内装工事を行う場合、税務会計上は「設備投資」を行うことになります。

具体的には10万円以上の物品を購入した場合、費用計上するのではなく、「固定資産」として計上することになります。例えばお皿を1枚300円で購入したら、飲食店のみなさまが記入する帳簿には、お皿1枚300円として費用計上することになります。

一方で、20万円の業務用冷蔵庫を購入した場合、その20万円を費用計上は出来ません。固定資産として帳簿につけることになります。そして、固定資産としてつけられた場合、「減価償却」が発生します。

減価償却とは

上記にて、大型の物品を購入したら、単純に費用計上ではなく固定資産計上となり、そこから減価償却が発生します、と記載しましたが、そもそも減価償却とは何ぞや?について以下で簡単にご説明します。ただし、あくまで考え方であり、詳細は本コラム冒頭に記載のとおり、お近くの税理士先生にご確認ください。

減価償却とは、色々と考え方がありますが、分かりやすく言いますと、その物品設備の耐用年数に応じて、購入金額(いわゆる簿価)を分割で費用計上してね!という内容です。例えば100万円の設備を購入し(簿価100万円)、耐用年数が10年ならば、毎年費用計上できるのは、100万÷10年=10万円となり、この10万円が帳簿に記載されるその物品設備に対する減価償却費=経費算入できる金額です。

よくある話で、Aという会社が、今期はたくさん儲かって利益が凄くある。でも来期の利益見込みは少ない。このままだと来年払う法人税が経営上重たくなる、、、どうしよう、、、そうだ!せっかく利益がたくさん出てるから、この際に大型の設備投資をして、それを一括で費用計上すればその分利益が相殺されて来期の法人税負担が軽くなる!!!

と、誰しも考えてしまうかもしれませんが、そんな都合のいいことを税務署は許しません。

その大型設備投資は固定資産として計上され、減価償却として耐用年数に応じて分割で経費計上されます。よって来期の法人税が劇的に軽くなることはありえません。

ちなみに、話はそれますが、みなさまの中には自宅としてマンションや戸建てを所有している方もいらっしゃると思います。ご自宅を売却する際、翌年の確定申告ではしっかり自宅の建物については減価償却が発生します。普段は居住用として減価償却のげの字も意識することはないですが、いざ税務処理となった場合は、否応なしに減価償却に向き合うことになります。

動産(設備)でも、不動産(建物)でも減価償却は発生します。なお、土地の減価償却は発生しません。土地は地球であり、地球には耐用年数がない為です。正確には数億年なのでしょうが、、、

飲食店に関わる減価償却について

上記で、設備投資と減価償却の関係性について解説しました。では、飲食店のみなさまには具体的にどう関わるかについて、以下で解説します。

飲食店設備の耐用年数

引用:国税庁 「耐用年数表」
https://www.keisan.nta.go.jp/h29yokuaru/aoiroshinkoku/hitsuyokeihi/genkashokyakuhi/taiyonensuhyo.html

上のリンクは国税庁のHPに記載されている耐用年数表です。資産計上された物品設備に対して、それぞれの項目ごとに耐用年数が決められております。

細かく見るとキリがないのですが、大雑把な考え方しては、そのものの体重が軽いと耐用年数は短く、体重が重たいと耐用年数は長い傾向です。ただ、設備投資の場合、概ね最長でも15年の耐用年数=償却期間です。一般論的に、飲食店のみなさまが開業するにあたり内装設備を色々と用意しますが、それトータルでの平均化した耐用年数期間は8年~10年くらいかなと思います。

つまり、飲食店の開業にあたり、内装工事を例えば1000万円かけて行いました。この場合、この1000万円÷10年=100万円を毎年、減価償却費用として経費計上することになります。

減価償却期間と定期借家契約との関係性

さて、ここで前回のコラムでも取り上げた定期借家契約との関係性について解説します。
上述の通り、設備投資をしたら一括費用計上は不可であり、毎年減価償却が発生します、と述べました。

一方で、こちらも解説の通り定期借家契約には契約期間が存在し、期間満了後は基本的には契約終了、さようならということで飲食店のみなさまはそこから退去する運びとなります。

この退去時の取り扱いが非常にトラブルの種となりやすいです。

償却期間内での退去とは

普通借契約時でも起こりえますが、一番わかりやすい例が定期借家契約でのパターンなので、 定期借家契約でのパターンで記載します。

例えば期間3年での定期借家契約を締結、スケルトンから内装工事を行った場合、上述の通り、設備の耐用年数はざっくり10年となります。

そして、3年を満了して泣く泣く本当に退去することになったとしたら、、、確かに退去するという物理的な行為は原状復帰工事を対応すれば行えます。しかし、税務会計は別の問題が発生します。原状復帰を行い、用意した設備を撤去したら、自分の資産から外されることになります。

しかし、ここで外された資産に耐用年数が残っている、つまり減価償却の期間が残っている(残存簿価が残っている)場合、税務会計上は、どのような扱いとなるのでしょうが。これは、【設備の除却損】という処理を行います。具体的には、開業に伴い、1000万円の設備投資を行いました。3年後に退去する場合、7年分の資産価値(700万円分)が残っており、これを一括で除却損として計上することになります。

本コラムの第一回目のコラムで記載した飲食店の収支構造とは?で解説した、飲食店の損益計算書の下の方にある【特別損益】がこれに当たります。想定外に発生した費用計上です。

損益計算書との関係

上述の通り、残存耐用年数が残っているのに退去の節目に合うならば、その設備については除却損により損益計算書上は計上すると解説しました。

損益計算書に、除却損として多額の金額が計上されてしまうと、果たしてどうなるのか、、、
一番分かりやすい例が、金融機関が良い顔しません。

退去して、では少し休憩して来年にまたお店をやろう!と思い、内装設備投資を行うとして、その資金を金融機関に借りる場合、金融機関は当然にそのお店の財務資料を3期分くらい要求します。

多額の除却損を計上してると、その財務資料に傷をつけることになり、結果として飲食店のみなさまが借りたい金額を金融機関は融資してくれないかもしれません。除却損が発生した結果、純利益が赤字計上となることもありえます。

なお、本コラムではたまたま減価償却からの除却損の話をしておりますが、第一回目のコラムに記載のとおり、飲食店を営むことは、1つの会社経営と同じです。

経営者である以上は、自社の財務諸表を常に睨めっこしておかなければ、いざ金融機関から資金を融資してもらいたい!と思っても、金融機関からケチをつけられしまう可能性があるので、常日頃、注意深く取り扱うことが大切です。

対応策

上述の通り、何も考えずに平気で定期借家契約を締結し、スケルトンから内装工事を行い、馬鹿正直に退去したとしたら、目も当てられない結末が待っているかもしれません。そうならないようにするには、どうしたら良いでしょうか。以下にて考えらえる対応策を解説します。

定期借家契約の期間

この問題は、定期借家契約の期間と設備投資の減価償却の期間とのミスマッチにより発生する問題です。ならば、定期借家契約の期間を予め長期で結べばいいのでは!?と思うところです。

これは、確かに1つの正解です。極端な話、期間10年の定期借家契約を締結し、本当に10年間お店を継続し10年後に退去したとしたら、その頃には設備の減価償却の期間もなくなっているので、除却損のトラブルは発生しにくくなります。

ただし、あくまで10年という長期にわたり、お店を継続させることが前提です。定期借家契約のコラムでも記載の通り、原則10年間は大家もテナントも退去に関して動かすことはできません。これはこれでリスクがあります。

中古の設備を購入

ならば、賃貸借の期間を長くするのではなく、設備側の減価償却の期間を短くすればいいのでは!?という発想です。具体的には中古の設備機器を購入することです。

例えば中古の大型冷蔵庫を購入した場合、それの製造年月日が2015年だとしたら、今年は2022年なので、7年経過しております。当然に減価償却の期間をその分進んでおります。中古の設備機器を購入した場合、考え方としては減価償却の期間は経過した分の減価償却の期間をそのまま引き継ぐことになります。

中古の設備機器を用意して、例えば5年お店を行いその後に退去するとなれば、当該設備機器の減価償却の期間はほとんど終了していることが想定されます。よって多額の除却損が発生する可能性は低いです。これはかなり現実的な対応策です。

なお、中古での設備購入と似た形で、設備の居抜き譲渡による方法もあります。要はこれも中古でマルっと設備を譲り受けることになります。

程度の良い居抜き物件は裏を返すと新しい設備であり、耐用年数がバッチリ残っています。
程度の悪い居抜き物件は、耐用年数は短いですが、そもそもこれ使えるの?ので結局新品を泣く泣く用意するケースも多いです。個人的には同じ中古でもメンテナンスされた中古設備を購入した方がトータルバランスで理にかなってるかと思います。

リースで設備を用意

その他の対応策としてリースでの対応もあります。設備の所有権を飲食店に持たず、リース会社に所有権が存在し、リース物件として毎月リース料を払う形式です。

これは、初期のイニシャルコストが発生せず、直接的に飲食店に減価償却が発生しないこともあり、所謂オフバランスの観点では優れた対応策です。

ただし、リースには必ず契約期間があり、飲食店の退去の結果リース契約を中途解約する場合、基本的には残存リース期間分のリース料を一括で支払うことになります。レンタルみたいに簡単にさよならは出来ません。居抜き譲渡により、後継テナントにリース物件を譲るとして場合でも、そもそもリース会社によってはリース物件の中途名義変更が許されてない場合もあります。

リース契約の名義変更でなく、中途解約前提で対価をもって後継テナントにリース物件を売却し、その売却益で残存リース料を支払う方法もありますが、こちらも後継テナントありきの話なので、うまく行く保証はどこにもありません。

そもそもリース料には、リース会社の利益も当然に乗っかってますので、単純な分割払いよりも割高です。リースで設備を用意する場合、イニシャルコストがかからないメリットはありますが、入り口が良くても出口で失敗するケースもあります。飲食店開業時の事業計画と照らし合わせて、よくよく検討が必要です。

個人的には、トータルバランスを鑑みるに、中古での設備機器の導入がベターな方策かと思います。

まとめ

本コラムでは、定期借家契約の契約期間と設備耐用年数(=減価償却期間)との関連を考察しました。どちらかと言えば飲食店を閉める時の話になりますが、一人の経営者としては、飲食店をどうやって後始末するかは重要な経営課題です。何も考えずに突っ走るのは非常に危険です。

飲食店の経営開始から終わりまで、どのようなスタンスで臨むべきか、お気軽にテンポスまでご相談ください。誠意対応して参ります。

テンポスは、飲食店の開業にあたり、事業計画の策定方法、効果的な不動産物件の探し方など、厨房機器等以外のソフト面でも、全力で飲食店の開業をサポートします。詳しくは下記までお問合せください。お問合せ、心よりお待ち申し上げます。

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