東京で飲食店を開業する際、料理の味や空間デザインと同じくらい重要なのが「厨房とホールの動線設計」です。料理の提供が遅れれば顧客満足度が下がり、スタッフの動線が悪ければ従業員の疲弊にもつながります。
今回は、飲食店専門の内装会社「スタジオテンポス」が、厨房とホールの効率的な動線を設計するための10のポイントを、現場目線でわかりやすく解説します。
目次
厨房とホールの距離は“最短”が基本
配膳の移動距離が長いと、提供時間の遅れ・スタッフの負担・料理の冷めなど、あらゆる点でデメリットになります。可能な限りホールに近い位置に厨房を配置し、無駄な往復を減らす設計が回転率にも影響します。
スタジオテンポスでは、開業前から導線シミュレーションを行い、最短ルートの厨房計画を立てます。
“出入口の分離”で動線の混乱を防ぐ
厨房の出入口がひとつしかないと、料理を運ぶスタッフと食器を下げるスタッフが交錯してしまい、混雑や事故の原因になります。
可能であれば入口と出口を分ける「一方通行型」にすることで、動きがスムーズになります。
小規模店舗でも通路や間取りの工夫で実現可能です。

※タイ料理店のレイアウト図と施工後の写真:料理を下げる、提供するを同時にできる導線に
厨房レイアウトを「調理工程別」に分ける
東京の飲食店では厨房が狭く、すれ違いが起こるほどの通路幅すら確保できないことが多いのが現実です。そのため、厨房レイアウトは“キッチン担当同士のすれ違い”を前提とするより、調理工程ごとに動線を分けることでスムーズさを確保する必要があります。
揚げ場・盛り付け場・ドリンク場など、作業内容ごとに分けて動線を交差させない配置にすることで、無駄な混雑や滞留を防げます。
スタジオテンポスでは、厨房内の作業シミュレーションをもとにゾーニング設計を行っています。
“ディシャップ”を設けて厨房の詰まりを防ぐ
料理の提供直前、盛り付けられた料理の“置き場”がないと、厨房内に人と料理がたまり、導線が詰まる原因になります。そこで有効なのが**「ディシャップ」**(配膳カウンター)です。
ホールと厨房の間にディシャップを設けることで、料理を一時的に置く場所が確保され、厨房からの搬出とホールへの提供の流れが整理されます。特に混雑時には「厨房内に人を戻さない」導線を確保するために、ディシャップの設置が大きな役割を果たします。

視線を遮らない“オープンカウンター”の活用
厨房とホールが仕切られていると、声かけや連携が取りにくくなります。
オープンカウンターにすることで、厨房からホールの状況が見え、タイミングを合わせやすくなります。注文のタイミング、料理の仕上がり、配膳の呼吸が合えば、オペレーションの質が上がります。

▶オープンカウンターの一例:もつ焼き居酒屋
ドリンクやデザートなど“分業”を前提に設計する
厨房の一角にドリンクスペースやデザート作業場を設ける店舗もありますが、混在すると動線が交錯しやすくなります。作業別のスペース区切りや担当導線を分けることで、衝突や待機のムダをなくせます。
オープン後に”もっとこうしておけばよかった、、”と感じることもあります。その場合は再設計が可能な場合があります。スタジオテンポスでは、分業型店舗向けのゾーニング設計も多数実績があり、オープン後の再設計相談にも柔軟に対応します

“回遊動線”を取り入れて詰まりを防ぐ
一方向だけでなく、回り込める「回遊型」の動線を持たせることで、スタッフが自由に動ける余裕が生まれます。狭い店舗でもカウンターやキッチン機器の配置を工夫すれば回遊動線を確保可能。
忙しい時間帯でも“詰まらない”レイアウトが、現場ストレスの軽減にもつながります。
ホールスタッフの“目線動線”も設計に含める
お客様の動きだけでなく、ホールスタッフが「どこを見るか」も重要です。厨房との視線の通り方、注文状況の把握、料理の完成タイミングなど、目線の動きがスムーズであるほど、効率的なサービスが可能になります。
壁の高さや仕切り位置にも工夫が必要です。
“掃除・清掃”も導線設計に含める
厨房とホールの動線には、業務中だけでなく営業前後の清掃も関わってきます。掃除道具の収納位置や、床の水はけ、ゴミの動線まで配慮することで、メンテナンスの手間が減ります。
快適な厨房環境は、スタッフ満足度にも直結します。

“開業後の動き”を想定したレイアウト確認
図面上では完璧に見えても、実際の営業が始まると想定外の動線の重なりが発生することも。スタジオテンポスでは、開業前の段階で“営業シミュレーション”を行い、厨房・ホール両方の導線のズレや詰まりを事前に確認します。
理想は、実際に厨房機器や什器を仮置きしながらの最終確認です。
■ まとめ
厨房とホールの動線が整っていれば、料理提供のスピードが上がり、スタッフも疲れにくくなります。これは結果的に「顧客満足度」と「従業員満足度」の両方を高めることにつながります。
スタジオテンポスでは、営業現場の動き方を想定した設計・レイアウト提案を行い、長く愛される店舗づくりを支援しています。