居酒屋を開業する際に欠かせないのが「保健所への対応」です。
どれだけ美味しい料理や魅力的な空間を用意しても、保健所の基準を満たしていなければ営業許可を得ることはできません。
今回は、居酒屋開業にあたって押さえておきたい保健所対策のポイントを10個に絞ってご紹介します。

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目次
事前相談を活用しましょう

居酒屋を開業するにあたって、保健所への「事前相談」は非常に重要なステップです。
これは、営業許可の正式申請の前に、保健所の職員と直接話をしながら、店舗の図面や設備計画について確認してもらえる制度です。
スムーズな開業を目指すうえで、事前相談を活用することには大きなメリットがあります。
なぜ事前相談が必要なのか?
保健所の審査では、食品衛生法に基づいた細かな基準をクリアする必要がありますが、その内容は地域によって多少の差があるうえ、一般の方にとっては分かりにくい部分も多いです。
たとえば、
・手洗い場の設置場所と数
・調理スペースと洗浄スペースのレイアウト
・ゴミの保管場所や換気の方法
・食品保管の区画分け
など、思わぬ部分で引っかかってしまうケースも少なくありません。
そこで、事前相談を通じて図面や計画段階でチェックを受けておけば、後から修正工事を求められるリスクを減らすことができます。
事前相談で持っていくもの
事前相談の際には、以下の資料を持参するとスムーズです。
・店舗の設計図面(平面図)
・厨房機器や手洗い器、冷蔵庫などの配置図
・メニューの概要(提供する食事の種類によって必要な設備が変わるため)
・店舗の写真(既存物件を改装する場合)
図面は、できれば設計士や施工業者と連携して作成したものが望ましいですが、手書きでも構いません。
正確な寸法と配置が分かるようにしましょう。
どのタイミングで行くべきか?
理想的には、物件を契約する前または工事に入る前に相談を行うことです。
契約後に保健所からNGが出た場合、費用面でもスケジュール面でも大きなロスになる可能性があるからです。
事前相談は無料で行っている自治体がほとんどですので、ぜひ積極的に活用しましょう。
保健所との信頼関係も築ける
事前相談を通して、保健所の職員との信頼関係を築くことも大切なポイントです。
開業後の定期検査や指導の際にも、「しっかり準備しているお店」として好印象を持ってもらえることがあります。
必要な資格を確認・取得

居酒屋をはじめとする飲食店を開業する際には、法律で定められた資格や講習の修了が必要になります。
とくに重要なのが「食品衛生責任者」の設置です。
これは、店舗ごとに必ず1名が選任されていなければ、営業許可が下りません。
食品衛生責任者とは?
食品衛生責任者とは、店舗の衛生管理や食中毒予防などを担う店舗内の衛生管理の責任者です。
調理や提供に関する日常業務だけでなく、従業員への衛生指導、記録の保管なども役割に含まれます。
資格を取得する方法
調理師・栄養士などの国家資格を持っている場合
すでに以下のような国家資格を持っている場合、申請だけで食品衛生責任者に選任することができます。
・調理師
・栄養士
・製菓衛生師
・食品衛生管理者
・食品衛生監視員 など
この場合は、保健所に資格証明書(コピーでOK)を提出すれば、講習を受ける必要はありません。
国家資格を持っていない場合
多くの方はこちらに該当すると思いますが、国家資格を持っていない場合でも、「食品衛生責任者講習会」を受講することで、責任者になることが可能です。
講習会の概要は以下のとおりです。
内容
開催場所:各都道府県の食品衛生協会など
所要時間:通常1日(6~7時間)
費用:約10,000円前後(地域によって異なる)
受講資格:18歳以上(学歴・経験不問)
取得後の有効期限:基本的に無期限(更新不要)
受講後、その場で「食品衛生責任者手帳」が交付されるため、すぐに営業許可申請に使えます。
誰が責任者になるべき?
基本的には店舗の運営者や店長が責任者になるケースが多いですが、厨房責任者や信頼できる従業員でもOKです。
1店舗に1名いればよいので、複数人が資格を持っている必要はありません。
ただし、複数店舗を展開する予定がある場合は、各店舗ごとに責任者が必要になるため、先に何人か取得しておくと安心です。
その他の関連資格
食品衛生責任者のほかに、開業形態や提供するメニューによって、以下のような追加資格・届出が必要になる場合もあります。
・深夜酒類提供飲食店営業届出(深夜0時以降に酒類を提供する場合)
・防火管理者(収容人数30名以上の店舗)
・ふぐ調理師免許(ふぐ料理を提供する場合)
・喫煙可能室の届け出(喫煙可能店舗を運営する場合)
これらは、営業形態や物件の広さによって必要・不要が分かれますので、あわせて保健所や消防署などに確認しておきましょう。
設備要件の確認は必須

居酒屋を開業する際、保健所から営業許可を得るには、一定の「設備基準」を満たしていることが必須条件となります。
保健所は店舗の「清潔さ」と「衛生管理のしやすさ」を重視しており、厨房を中心とした設備の配置・仕様が基準に沿っていないと、許可が下りないこともあります。
この章では、保健所が特に注視する主な設備要件を項目ごとに詳しくご紹介します。
厨房と客席の区切り
厨房と客席は明確に区切られている必要があります。
完全な壁で仕切る必要はありませんが、調理エリアと飲食エリアを分離し、異物混入や衛生面のリスクを抑える構造でなければなりません。
・カウンター越しの提供もOK(ただし厨房側に手洗い器や給湯器の設置が必要)
・暗黙のラインでなく、什器や仕切りで物理的な区分けがあると安心
手洗い設備の設置
厨房内には必ず1カ所以上の手洗い設備が必要です。
以下のポイントをチェックしましょう。
・給湯(お湯)も出るタイプが望ましい
・石けん(液体タイプ)・手拭き用ペーパータオル設置が必須
・トイレ内の洗面台は厨房の手洗いとは別で必要
シンク(流し台)の数と用途分け
洗い物をするためのシンクの設置数も、提供するメニューや規模によって異なりますが、以下が基本的な目安です。
・2槽以上のシンクが望ましい(食器用と食材用で分けるため)
・包丁やまな板を洗う場所、野菜を洗う場所など、用途ごとの衛生区分けが求められます
給湯設備
食器や調理器具をしっかり洗浄・消毒するには、お湯の供給が不可欠です。
多くの保健所では、以下のような基準を設けています。
・厨房のすべてのシンクで40℃以上のお湯が出ること
・電気温水器やガス給湯器を適切に設置
冷蔵・冷凍庫の容量と清潔管理
食材の保存に使う冷蔵庫・冷凍庫についても、以下のようなポイントが見られます。
・食材ごとに区分け保管できる容量があるか
・床に直置きせず、脚付きで設置されているか(掃除がしやすいため)
・外から温度管理が見える温度計があるか
床・壁・天井の素材と清掃性
店舗全体の「清掃のしやすさ」も重要視されます。
・床材は防水性・耐薬品性があり、水拭き・消毒ができる素材であること
・壁、天井も凹凸の少ない素材(パネルや塗装など)が理想
・厨房の床に排水口があるかもポイントです
換気設備
調理の煙や蒸気を外に排出するための換気扇や排気ダクトも必要です。
・ガス機器の上にフード(換気フード)を設置
・湿気がこもらないよう、給気と排気のバランスも重要
・煙が店内に充満しない構造にする
食品保管場所の確保
・常温で保存する調味料や乾物などの保管棚は壁から離して設置
・床に直置きは禁止、スノコや棚の上で保管
・開封済み食品には日付と内容のラベリングを推奨
虫・害獣の侵入対策
・出入口には網戸やエアカーテンを設置
・排水口にはトラップやグリストラップを設ける
・外からの隙間を塞ぎ、密閉性を高める工夫が必要
ゴミの一時保管スペース
・蓋付きで密閉できるゴミ箱を用意
・厨房内・屋外に分けて分別保管ができるように
・害虫や悪臭の対策としてこまめな回収体制も必要です
図面は正確に作成

居酒屋の開業にあたって、保健所へ営業許可申請を行う際には、店舗の「図面」提出が必須となります。
この図面は、単なる間取りの説明ではなく、衛生管理と設備配置の適正性を判断する重要な資料として扱われます。
図面の内容が不正確だったり、設備が記載されていなかったりすると、「修正指示」や「再提出」を求められることになり、開業スケジュールに影響を及ぼす可能性もあります。
なぜ図面が重要なのか?
保健所の担当者は、実地調査(立入検査)に入る前に、提出された図面を見て以下の点をチェックします
・設備が必要な場所に正しく配置されているか
・動線が衛生的か(交差汚染が起きないか)
・スペースが十分に確保されているか
・衛生基準(手洗い・給湯・換気など)を満たしているか
つまり、正確な図面は、審査の通過率を上げる大きな鍵になるのです。
作成するべき図面の種類
以下の2種類の図面を用意するのが一般的です
平面図(レイアウト図)
店舗全体の間取りと、各設備の位置関係が分かる図
・厨房・ホール・トイレ・倉庫などのスペースを明確に分ける
・設備の種類(シンク、冷蔵庫、手洗い器など)と寸法の記載があるとベスト
給排水・電気設備図(必要に応じて)
・給湯器の設置場所、配管の流れ、排水口の位置など
・特に厨房設備が複雑な場合や、既存物件を改装する場合は求められることも
図面に記載すべき主な設備
図面には、以下のような設備をもれなく記載するようにしましょう。
手洗い器:厨房・トイレ内にあるものは全て記載
流し台(シンク):食器洗い・食材洗いの用途別に分けて記載
コンロ:火気設備の位置と数を明記
換気扇・フード :調理機器の真上に配置し、排気方向も書く
冷蔵・冷凍庫:庫内温度が異なる場合は区別して記載
作業台:衛生的な調理動線が確保されているか確認可能に
給湯:出湯口の位置(シンクなど)との関係も重要
ゴミ保管場所:室内外を問わず、清潔管理できる構造か記載
作図はどうすればいい?
自分で手書きでもOK(ただし正確に)
・スケールを合わせて、実際の寸法を記載
・定規や方眼紙を使うことで見やすくなります
設計業者や厨房設備会社に依頼する
・プロに依頼すれば、保健所基準に則った図面を作成してくれる
・厨房レイアウトや換気計画も一緒に相談できるので安心
※提出用の図面は、A3またはA4サイズで提出するケースが多く、地域によってフォーマットが指定されていることもあります。事前に保健所に確認しておくと確実です。
提出前にチェックしておきたいポイント
・寸法やスケールが明確か(「1マス=1m」など)
・手洗い器、給湯器、換気設備など営業許可に必須の設備が漏れていないか
・設備の用途が一目で分かるか(シンクは何用か、コンロは何口か等)
・トイレの構造や男女の区分けが必要かどうか(店舗の規模による)
図面の精度は、スムーズな営業許可取得の大きな決め手になります。
保健所の「事前相談」を活用して、提出前に内容の確認をしてもらうのが理想です。
「まだ店舗が決まっていない」「図面作成が不安」という方も、物件選定やレイアウト設計の段階から準備を始めることで、開業後のトラブルを未然に防ぐことができます。
動線・区画にも注意

居酒屋を開業する際に見落としがちですが、実は保健所が非常に重視するのが「人とモノの動線」や「空間の区画分け」です。
衛生的で安全な店舗運営を行うためには、調理・配膳・洗浄などの各工程において、交差汚染を防ぐための動線設計が重要になります。
適切に設計されていないと、営業許可が下りない、または改善指導が入る可能性もあるので、開業準備の段階でしっかり対策しておくことが大切です。
なぜ動線が重要なのか?
「動線」とは、スタッフやお客様、食材や食器などが店舗内で移動する経路・流れのことです。
動線が混在・交差してしまうと、以下のようなリスクが高まります。
・清潔な食材に汚れた器具が触れてしまう(交差汚染)
・スタッフ同士が動きにくくなる(作業効率の低下)
・お客様とスタッフの導線がかぶる(安全性の問題)
・ゴミの運搬経路が厨房内を通ってしまう(不衛生)
保健所は、これらのリスクがないかを図面と現場の両方で確認します。
具体的に注意すべき動線の例
食材搬入とゴミの排出経路は分ける
・新鮮な食材を運び入れる動線と、使用済み食材やゴミを出す動線が同じルートにならないように設計
・可能であれば、ゴミ置き場や回収場所は裏口近くに設け、お客様の動線や厨房内を横切らない構造にしましょう
調理エリア・配膳エリア・洗浄エリアの順序
・食材の搬入 → 下処理 → 調理 → 盛り付け → 配膳 → 回収 → 洗浄といった工程の流れが、一方向になるように設計
・逆流動線(洗い物が調理台のそばを通るなど)は衛生面でNG
スタッフとお客様の動線を分ける
・トイレの位置、お客様の通路、スタッフの動きがぶつからない構造が理想
・カウンター席の場合も、配膳時に調理エリアが妨げられない設計が求められます
区画の分け方とルール
「区画」とは、店舗内の各スペースを衛生管理上の目的で明確に分けたエリアのことです。
以下のような分け方が基本となります。
調理エリア:火気使用、加熱調理を行う場所。他のエリアと区切りが必要
下処理エリア:食材を洗浄・カットするスペース。生食材と加熱済みのものは別扱い
洗浄エリア:食器や器具の洗い場。調理・配膳のエリアと隣接させない工夫が必要
保管エリア:食品、調味料、器具の一時保管。高床・通気・分別収納が基本
配膳・接客エリア:お客様に近いエリア。厨房からの移動距離や提供導線が短い設計を推奨
実際の設計での工夫ポイント
・暖簾やパーテーションで動線を仕切る(視覚的にも効果あり)
・厨房の出入口を一方通行にする設計で交差を防ぐ
・調理スタッフ専用の靴やユニフォームエリアを設け、衛生意識を高める
・洗い物専用のカートや配膳トレーで、エリアを横断せずに効率化
保健所が見ている「動線と区画の評価ポイント」
・厨房内の動線に無理やムダがないか
・調理と洗浄が混在していないか
・食材や器具の保管場所が明確に分かれているか
・トイレから厨房への導線が直接通じていないか
・「清潔」と「不潔」の空間が交差していないか
これらに問題があると、保健所から「レイアウトの修正」を求められることがあります。
手洗い・消毒の環境整備

居酒屋をはじめとする飲食店において、「手洗い」と「消毒」環境の整備は、営業許可を取得するための基本中の基本です。
特に保健所の立入検査では、「手洗いがしやすいか」「衛生的な設備が整っているか」が重要なチェックポイントになります。
適切な環境整備ができていないと、「許可が下りない」あるいは「改善指導が入る」ケースもあるため、早い段階でしっかり準備しておきましょう。
厨房内には「専用の手洗い器」が必須
厨房には、調理作業専用の手洗い器を1つ以上設置する必要があります。
食材を扱う手と、洗い物をするシンクは明確に分けなければなりません。
保健所が求める手洗い設備の基準
設置数:厨房に1台以上(作業人数やスペースに応じて複数推奨)
給湯機能:お湯が出ること(温水が衛生管理上望ましい)
水栓の形式:レバー式・センサー式など、手を触れずに操作できるタイプが理想
備品類:液体石けん、使い捨てペーパータオル、消毒用アルコールの設置が必要
設置場所:厨房の出入口付近や、調理台からアクセスしやすい位置に配置
トイレの手洗い器とは別物とみなされる
トイレに設置された洗面台は、厨房の手洗い器とは別にカウントされます。
トイレから厨房への動線が短い場合、中間の手洗い場の設置が必要とされる場合もありますので要注意です。
アルコール消毒設備の設置もポイント
手洗い器の横や入口付近には、アルコール消毒液の設置も推奨されます。
これにより、手洗い+消毒のダブル対策ができ、衛生水準が格段に向上します。
消毒の設置場所の例
・厨房内の手洗い場のすぐ隣
・お客様が触れる入口扉の付近(お客様用消毒液)
・レジ周辺や配膳台のそば
・調理スタッフの休憩エリアや出入り口
清掃しやすい構造・素材選びも重要
・手洗い器自体やその周辺環境も、清潔に保ちやすい構造かどうかがポイントです。
・ステンレス製のシンクや台はサビにくく衛生的
・配管のまわりに汚れがたまりにくい構造が理想
・ペーパータオルホルダーは壁に取り付け型で濡れない設計が◎
・床の排水口やシンク下の収納スペースも、こまめに清掃できる設計が望ましい
手洗い・消毒に関する保健所チェックリスト
保健所の調査時に確認されるチェック項目を一部ご紹介します。
・厨房内に専用の手洗い器が設置されているか
・温水が出るかどうか(目視確認されることも)
・液体石けんとペーパータオルが備え付けられているか
・手洗い器の周辺が清潔に保たれているか
・消毒設備が機能しているか(使用頻度もヒアリングあり)
実践ポイント:スタッフの衛生教育もセットで
どんなに設備が整っていても、スタッフが正しい手洗い・消毒の習慣を持っていなければ意味がありません。
開業時には以下のような衛生教育を行いましょう。
・正しい手洗いの手順を掲示
・業務前・食材の切替時・トイレ後などタイミングの徹底
・手袋の使い分けと交換ルール
・アルコール消毒の使用法と頻度
食材・器具の保管に注意

食材や調理器具の保管方法は、食中毒防止と衛生管理の基本です。
保健所は「どこに・何を・どのように保管しているか」という点をしっかりチェックします。
適切な保管環境が整っていない場合、営業許可が下りない、あるいは営業中に改善指導が入ることもあります。
店舗開業前から、保管スペースの計画と衛生的な収納方法を明確にしておくことが大切です。
食材の保管で気をつけたいポイント
生もの・加熱済みのものを分けて保管
生肉や魚介類などの生食材と、調理済み食品や野菜などの非加熱食材は、別の容器・棚・冷蔵庫で保管するのが基本
・交差汚染防止のため、容器にフタをしてラベルを貼る(内容物・日付など)ことも重要
冷蔵庫・冷凍庫の温度管理
・冷蔵庫は0〜10℃、冷凍庫は−15℃以下が基本的な基準
・温度計が設置されているか、定期的な温度チェックを記録しているかがチェック対象
・食材の詰めすぎに注意し、冷気の循環を妨げない収納が必要です
床に直置きしない
・保健所では、食材や調味料、容器類の直置きは禁止されています
・必ず棚・台の上に保管(最低10cm以上の高さ)し、清掃しやすい環境を作る
食器・調理器具の保管で気をつけたいポイント
乾燥・清潔な状態で保管
洗浄後はしっかり乾燥させてから収納するのが基本。
水気が残っていると、カビ・細菌繁殖の原因になります。
水切りラックを使って自然乾燥させる or 熱風消毒庫の活用も推奨されます
調理器具は用途別に分類・区分け
・生食用・加熱用など、用途ごとにまな板・包丁などを使い分けて保管
・色分けやラベル管理を行い、混同を防ぐしくみをつくる
扉付きの収納棚が理想
・食器・器具類は埃や汚れを防ぐため、扉付きの棚や容器に収納するのが望ましい
・オープン棚を使う場合は、使用頻度の高いものに限定し、こまめな清掃が必要です
保管スペースの設計ポイント
・スペースを無理に詰め込まず、風通しと清掃性を確保
・通気性が悪いと湿気や臭いがこもり、衛生面でNG
・棚や台の下も掃除ができるようにキャスター付きや足高構造が理想
ゴミと保管スペースは必ず分離
・食材・器具の保管エリアと、ゴミの一時置き場所が近接していないかを図面上でも要確認
・ゴミ箱のふたがない、臭気が保管エリアに流れ込む構造は指摘されやすいポイント
保健所がチェックする主なポイント
保管棚の清掃性
汚れが溜まっていないか、床に置かれていないか
食材の分別
生食材・加熱用食材・調理済み食品の分け方
ラベル管理
消費期限、仕込み日などが適切に記録・表示されているか
温度管理
冷蔵・冷凍庫の温度が基準内か、温度計があるか
食器・器具の状態
傷んだ器具や汚れた食器をそのまま使っていないか
実践アドバイス:保管ルールをマニュアル化
従業員全員が共通認識を持てるように、保管ルールを「見える化」するのがおすすめです。
たとえば
・食材ごとの棚位置マップを作成
・色分けシールでまな板や包丁を管理
・日付管理用のラベルを導入し、使い忘れを防止
ゴミ処理の計画も重要

居酒屋のような飲食店では、食品残渣(ざんさ)や包装ゴミ、生ゴミなど、日々多くのゴミが発生します。
これらを衛生的に、かつ計画的に処理できる仕組みがなければ、悪臭や害虫の原因になり、保健所からも厳しくチェックされる項目です。
保健所が見る「ゴミ処理体制」とは?
保健所が確認する主なゴミ関連のチェックポイントには、以下のようなものがあります。
ゴミ置き場の設置
店内や敷地内に明確なゴミ保管スペースがあるか
衛生管理
ゴミ箱のフタの有無、清掃状況、悪臭対策など
動線の工夫
食品保管場所や調理場と十分な距離があるか
分別ルール
燃えるゴミ、ビン・缶、生ゴミなどの適切な分別がされているか
収集業者との契約
産業廃棄物としての処理ルートが明確になっているか
店内のゴミ箱設置ポイント
厨房内
・ゴミの種類ごとに複数設置(生ゴミ、可燃、不燃)
・フタ付きタイプを使用し、臭いや虫の発生を抑える
・足で開けられるペダル式が衛生的で便利です
ホール・客席
・お客様の目につかない場所に小型ゴミ箱を設置するか、スタッフが回収するスタイルも可
・おしぼりや紙ナプキン用の小型ゴミ箱の設置も考慮
トイレ
・ペーパータオルやサニタリー用のゴミ箱を設置し、清掃・交換のルールを徹底
ゴミの一時保管場所(バックヤード)のポイント
・店内から出したゴミは、回収までの間、清潔な場所で一時保管する必要があります。
・保管場所は必ず屋根付きで、雨水や直射日光を避ける構造にする。
・コンクリートやタイルなど洗浄しやすい床材を使用し、定期的な消毒も行う。
・ゴミ置き場の周囲に清掃用の水道を設置すると衛生管理がしやすくなります。
近隣とのトラブルを防ぐ配慮も大切
飲食店のゴミは量が多く、臭いも強いため、以下の点に注意することで地域トラブルを防げます。
・ゴミ出しの時間帯を守る。(早朝に出しすぎると苦情のもと)
・ゴミ袋の破れや液だれ対策を徹底。(二重袋+専用バケツがおすすめ)
・匂いや害虫対策に、消臭剤や防虫スプレーを常備。
・近隣の住宅や店舗の出入口や窓の近くにゴミを置かない。
産業廃棄物の取り扱いについて
飲食店から出るゴミの中には、自治体の家庭ごみ回収ではなく「産業廃棄物」に該当するものもあります。
これには専門の回収業者との契約が必要です。
よくある産廃ゴミの例
・食用油(使用済み)
・割れたガラスや陶器
・古くなった調理器具・什器類
・食材の大量廃棄(イベント・営業停止時など)
契約書類や回収記録を保健所の調査時に提示を求められることもありますので、しっかり管理しましょう。
実践アドバイス:ゴミ管理のルール化
ゴミの出し方や片付けのルールは、従業員全員が共有できるようにマニュアル化するのが効果的です。
下記に例を挙げます
・ゴミ分別一覧表を掲示
・廃棄時に日付と内容を記録(生ゴミ管理表など)
・「その日出たゴミはその日のうちに袋詰め・片付け」が基本ルール
ゴミ処理はただ“片付ける”だけでなく、衛生管理・臭気対策・近隣配慮までを含めた重要な運営要素です。
保健所対策としても、計画的なゴミ管理ができている店舗は信頼性が高く、スムーズに許可が下りやすい傾向にあります。
「どこに置くか」「どう捨てるか」「誰が管理するか」を明確にし、開業前からしっかりと準備しておきましょう。
害虫・害獣対策を講じる

飲食店におけるゴキブリ・ネズミ・ハエ・コバエなどの侵入や繁殖は、衛生面で大きなリスクとなり、保健所の営業許可審査でも重要な確認項目です。
特に居酒屋は、夜間営業・残飯・湿度など「害虫が好む条件」がそろいやすいため、開業前の対策と継続的な管理体制が不可欠です。
保健所が見る主なチェックポイント
建物の密閉性
壁・床・天井に隙間や穴がないか、ドアの下部に隙間がないか
害虫の発生源対策
配管まわり・排水溝・ゴミ置き場の清掃状況
防虫設備
虫除けカーテン、ドアの自動閉鎖機構、防虫網の設置など
モニタリング体制
捕獲器(トラップ)の設置・管理状況
害虫駆除の記録 定期的な業者清掃・薬剤散布の記録があるか
害虫・害獣の主な種類と対策
■ ゴキブリ
厨房機器の下・隙間・排水溝に潜みやすい
油汚れや食材カスを好むため、調理場の毎日清掃と定期的な徹底清掃が重要
対策
・粘着トラップの設置(定期点検)
・床下にベイト剤(毒餌)や防虫剤の設置
・配線・配管の穴をパテなどで塞ぐ
■ ネズミ
配管・通気口・壁のすき間から侵入
齧られると電気配線・備品への被害も出る
対策
・店舗の周囲にエサ・ゴミを残さない
・侵入口(ドア下・壁の穴)を金網・パテで封鎖
・粘着シートや超音波装置も有効
・業者による年1〜2回の駆除点検を推奨
■ コバエ・ハエ類
生ゴミ・排水口・アルコール残りを好み、厨房・ホールどちらにも発生
対策
・生ゴミの密閉管理、こまめなゴミ出し
・ドリンクや酒類のこぼれた床は放置しない
・排水口のぬめり取り清掃とトラップの設置
店舗構造からの侵入対策
ドア・窓まわりの工夫
・自動ドアやドアクローザーの設置(開けっぱなしを防ぐ)
・ドア下の隙間にモールやブラシを設置
・出入口にエアカーテンやビニールカーテンを付けるとさらに安心
配管・排水溝の処理
・排水溝には蓋や防虫ネットを設置
・配管の接続部にすき間がないか確認
・グリストラップ(油分除去装置)は定期清掃が必須
害虫・害獣対策の「見える化」が重要
保健所は「定期的な対策をしているかどうか」も確認します。
以下のような”見える管理”が評価されます。
・捕獲器の設置位置マップを作成
・月1回の点検記録(チェックリスト形式)
・駆除業者との契約証明書や報告書の保管
・発見時の報告ルールをスタッフに徹底
害虫駆除業者との連携も有効
自力での対応に限界を感じたら、専門業者との契約も検討しましょう。
開業前の「予防駆除施工」や、「定期巡回管理プラン」などを依頼することで、プロの視点で死角をカバーできます。
開業後の定期的な点検も忘れずに

保健所の営業許可を取得して無事に開業できたとしても、それで終わりではありません。
飲食店経営においては、「衛生管理は日々の積み重ね」であり、継続的なチェックと改善が不可欠です。
特に保健所は、抜き打ちの立入検査や定期的な巡回指導を行っています。
日々の点検・記録がしっかりしていれば、検査の際もスムーズに対応できます。
定期点検でチェックすべき主な項目
調理設備
ガス台・換気扇・冷蔵庫の汚れや異常はないか
食材の管理
消費期限切れ食材や開封後放置されたものはないか
冷蔵・冷凍庫
温度が適正か(冷蔵5℃以下、冷凍−15℃以下)
食器・器具
洗浄不足や破損した器具がないか
手洗い設備
石けん・ペーパータオルが常備されているか
排水口・床まわり
ヌメリや詰まり、害虫の発生がないか
ゴミ置き場
分別・清掃・悪臭対策ができているか
害虫・害獣対策
捕獲器の点検、侵入口の封鎖状況確認
点検は「日次・週次・月次」で分けると効率的
日次点検(毎日行う)
・食材の期限・状態確認
・調理台・シンクの清掃
・トイレ・手洗い場の衛生チェック
週次点検(週に1回)
・排水口のブラシ洗浄
・捕獲トラップの確認
・ゴミ置き場周辺の洗浄・消臭処理
月次点検(毎月1回)
・冷蔵庫・冷凍庫の温度記録
・備品や消耗品(手袋・洗剤など)の在庫確認
・害虫駆除業者の点検報告チェック(契約がある場合)
点検は「記録」に残すことが大切
点検内容は、スタッフ間での引き継ぎや保健所への提出に備えて、記録に残すことが重要です。
記録の例
・「衛生点検チェックリスト」
・「冷蔵庫温度管理表」
・「清掃実施記録表」
など
紙での管理でも問題ありませんが、最近ではスマホやタブレットで記録できる飲食店向け衛生管理アプリも増えており、業務効率化に役立ちます。
スタッフ教育との連携がポイント
どれだけ点検リストを作っても、現場での実施が形骸化しては意味がありません。
そこで重要になるのが、「スタッフ全員が衛生意識を持って行動できるような教育と習慣化」です。
・衛生研修を定期的に実施(年2〜4回が目安)
・点検担当者をローテーションで回す
・1日の営業前や閉店後に「衛生チェックの時間」を設ける
・日々の中で「やるのが当たり前」という文化を根付かせることが大切です。
保健所の抜き打ち検査にも備える
保健所は、開業後も年1回前後で巡回指導に来ることがあります(地域によって異なります)。
また、お客様からの通報などがあると臨時の立入検査が行われることもあります。
その際、以下のような書類や状況がチェックされることがあります。
・営業許可証の掲示
・衛生管理記録の提出
・食材や器具の衛生状態の確認
・害虫対策の状況確認
・従業員の衛生教育の有無(研修記録など)
日頃から「いつ来ても大丈夫」という体制を整えておくことで、指導や注意を受けるリスクを減らすことができます。
まとめ
保健所のチェックポイントをあらかじめ理解し、対策を講じておくことで、余計なトラブルや時間のロスを防げます。
居酒屋開業の夢をスムーズに実現させるためにも、今回の10のポイントをしっかり押さえて準備を進めてくださいね。
テンポスでは開業に関するさまざまな情報を発信しています。
どうぞご参考になさってください。
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